「美味しんぼ」から読み解く親子の確執。モラハラ父を愛した母の死、子どもの長い苦しみ

オーナー兼カウンセラーの佐々木です。

『美味しんぼ』は、雁屋哲原作・花咲アキラ作画によるグルメ漫画で、
1983年から長期連載された作品です。(Google検索調べ)

お父さんの本棚に単行本があり、子供の頃に読んでいました。
インターネットの力を借りながら、佐々木の美味しんぼ愛をしたためたいと思います。

圧倒的に美味しんぼ既読勢が楽しめる内容だと思うので、
興味を持っていただいた方はぜひLINE漫画などのサービスから試し読みしてみてください。笑

平成後期の若い方にとってはおそらく耐えがたいハラスメント表現が連発されるため、
「この時代の作品!」と言い聞かせながら楽しむことをオススメします😂

 

ざっくりとしたあらすじ

舞台は「東西新聞社」。
主人公の山岡士郎は、同僚の栗田ゆう子と共に
会社の一大プロジェクトである「究極のメニュー」の企画責任者に抜擢されます。

企画のために日本各地や世界の料理を取材しながら、
食材や調理法の本質はなにかを掘り下げていきます。

料理を通して「人間の生き方」や「文化」「自然との共生」など幅広いテーマを扱い、
単なるグルメ紹介にとどまらず、食をめぐる社会問題や人間ドラマが濃密に描かれていく作品です。

 

士郎と雄山の親子関係

物語の大きな軸の一つが、主人公・山岡士郎とその父である海原雄山との確執です。

  • 海原雄山は、芸術と料理において絶対的な権威を誇る人物で、厳格で傲慢ともいえるほどの完璧主義者。
    日本美術界においても名声を得ており、料理に関しては「至高のメニュー」を提唱しています。
  • 一方、山岡士郎はその息子でありながら、幼少期に父の苛烈な教育や母との不和に苦しみ、
    心に深い傷を負っています。そのため父を憎み、反発心を抱えながら成長しました。

この親子の対立は物語の核心部分でもあり、
「究極のメニュー」(士郎側)と「至高のメニュー」(雄山側)という二大企画の対決として具体化されます。

両者の料理対決は、単なる味比べにとどまらず、
「食とは何か」「人を幸せにする料理とはどのようなものか」という根源的な問いを投げかけます。

物語が進むにつれ、士郎と雄山の間に和解の兆しが見え隠れする場面も描かれます。
(これが個人的にめちゃくちゃ萌える!)

料理を通じて互いの価値観をぶつけ合いながらも、根底には「食を愛し、人を大切に思う心」が共有されていることが浮かび上がっていきます。

この親子関係の葛藤と変化が、『美味しんぼ』の大きな魅力の一つです。

士郎の嘆き。切ないです

親子の歪み

さて、山岡士郎と海原雄山の関係は、典型的な「親子葛藤」の事例です。

  • 権威主義的養育
    海原雄山は芸術家・料理人として超一流であるがゆえに、子育てにおいても「完璧」を求め、高圧的な態度をとります。
    心理学的には「権威主義的養育スタイル」に近く、子どもに対して過度に厳しく、感情的な安心感を与えにくい環境を作っていました。
  • 愛着形成の不全
    山岡士郎は、幼少期に母が早くに亡くなってしまったことや父の厳格さにより、安定した愛着関係を築けない環境にありました。
    結果、父への憎悪や拒絶感情が強まり、対人関係においても皮肉屋で、斜に構えた態度が出やすい様子がみられます。
  • 同一化と再現
    興味深いのは、士郎が料理や文化に対して強い探究心を示す点です。
    これはまさに雄山から受け継いだ資質であり、心理学的には「同一化」の表れといえます。
    士郎は憎んでいる父と似通った要素を持っており、無意識に自らの行動で再現してしまっているのです。

このように「憎しみと同一性の葛藤」が士郎の内面に存在し、
それが物語を通して少しずつ整理されていく過程が描かれます。

 

結果、乗り越える!

物語が進むにつれ、山岡と雄山の関係は以下のように変化していきます。

  • 初期:士郎は雄山を「絶対に許せない父」として位置づけ、全面的に拒絶していますが
  • 中期:料理対決を繰り返す中で、士郎は「父の料理哲学」や「食に込める想い」に触れ、
    自分もまた同じ理想を求めていることに気づき始めます。
  • 終盤:雄山の人間的な弱さや、士郎やゆう子への配慮が描かれ、
    敵対一辺倒の関係から「互いを理解する関係」へと移行していき……
  • 解決:究極と至高のメニューは勝敗を超えた価値を持つものとされ、親子の断絶が緩やかに解かれます。
    士郎は父を全面的に受け入れるわけではなくとも、「食を通じてつながっている親子」としての絆を取り戻していきます。

 

心理学的には「愛着不全から始まる父子の葛藤と同一化のプロセス」、
物語構造的には「対立から和解への英雄譚」。

そして物語全体のテーマとして描かれる「食を通じた人間理解」こそ、
長くにわたって愛される『美味しんぼ』の魅力ですね。

紆余曲折のすえ結ばれる二人。キュンキュンです

それでは、またカウンセリングルームで🌙